和風の中にモダンな雰囲気が漂う環境に優しく人にも優しい住宅です。
建物回りはグルリと一周できます。日差しの干渉地帯であると共に外壁を長期間保護する役割を担っています。
■計画概要■
●用途地域 都市計画区域外
●建築面積 201.69㎡
●延床面積 155.49㎡
●構造種別 木造在来軸組工法
●階 数 1階建て
・プラン提案
敷地を選定するにあたり、他にも数か所検討した結果最終的に本敷地に辿りつきました。
敷地は基は農地であったため、住居用としては敷地全体の一定部分に計画することになりました。
雲仙市の瑞穂地区は山と谷が多く、平地は水田や畑が多いため今回国道に面する計画用地が入手できたことは幸運であったと思います。既存家屋の解体や敷地の造成なども全く必要がありませんでした。
傾斜地への造成された敷地では地盤調査の結果によっては杭工事などの基礎工事費用が余計に必要になってきます。
地盤調査及び試験を行った結果、地盤強度が比較的良好でしたのでベタ基礎仕様で計画することができました。湿気対策にもなり、建物荷重を分散するためにもベタ基礎の選択は良かったと思います。
実は設計を初めてしばらくの間、2階建ての計画で設計を行っていました。施工していただく工務店を探す段階で平屋も検討することになり、平屋プランも検討する運びとなりました。
そこで最初の2階建てプランと平屋建てプランも加えて検討を重ねた結果、立面デザイン的には横に広がった落ち着いた雰囲気を演出できる平屋の方がこの敷地に似合うのではないかと言う結論にまとまっていきました。
住宅は長期間使用するものですから、施主様が将来高齢になっても使用し易い平屋の方が上下の移動負担も少ないのではないかと言うのも平屋のメリットだと言えます。
・平面プラン
平面計画においては各部屋のプライバシーを確保しながら、有効な導線を確保できることを検討しました。
通常、廊下部分を減らし、生活空間を多く確保することが求められるケースもありますが、あえて廊下を確保することで各部屋のプライバシーを確保し、かつ明るさを確保する、さらに天井を高くすることで家の風格を演出する空間として提案させていただきました。
・外観提案
建物の特徴でもある外廊下ですが、庇部分を長く確保することで強い日差しから外壁を守ります。
夏の暑さ対策も兼ねています。実際、太陽光が直接外壁に届く時間帯を大幅に減らしています。外壁の劣化も防止してくれますので、メンテナンスも一般の外壁に比べ長持ちすることでしょう。
・室内イメージ提案
外壁の落ちついたシックな色合いから、一歩内部に入った瞬間、真逆の印象を与えるように内部は明るく白いイメージと無垢木材の木肌色をベースにインテリアを計画しました。昼間でも明るく、塗装クロスも光を反射してくれるのでかなりの明るさを確保することができました。直射日光が入るのではなく、庇で影になったやわらかい光が室内を暖かくソフトに明るくしてくれます。
キッチンと対面したリビングを中心に諸室が取り囲む構成とし、プライバシーの確保と親和性を両立させるプランです。
リビングは室内のインテリア家具の配置を考慮し、壁の高い位置から光を取り入れるようハイサイドライトを活用しています。TVボードやソファを配置する位置を想定し、西日が気にならないように窓の計画に配慮しました。
敷地内でできる限り建物を北側に配置し、南側にウッドデッキスペースを設けています。
ウッドデッキを有効に活用できない場合でも大きな窓を通してリビングと視覚的につながっているため外の植栽がいつでも楽しめるような計画としています。
フリースペース
奥行がある計画ですのでどうしても、住宅の中心は光が届きにくくなります。
水まわりである、トイレ・洗面・浴室の換気と水音の排除を兼ねてフリースペースを設けることにしました。
さらに、主寝室を落ち着いた空間にできるように、フリースペースをその間に設けることで、廊下にも明かりと空気の流れが生まれました。
この空間の利用方法については、これから住みながら作りあげていけるようあまり過度に手をいれませんでした。今後、趣味の空間、中庭的な利用、子供の遊び場、工作場、あるいはデッキスペースにすることも可能です。
1.深い庇がある家・外壁の保護と熱対策。庇で暑さを軽減。濃い色で熱を吸収。
2.自然素材をできるだけ使用する
3.無垢素材の床フローロングを使用
4.メンテナンスの容易を考えて配管を床下で手入れできるようにする。
5.シンプルなデザイン・落ち着いた外観デザイン
縁側のある風景
分離発注でコストをコントロールし、地元の業者と協調しながら施工。ほとんど職人さん同士は知り合いなのでチームワークも抜群です。
・基礎工事の開始
当社標準のベタ基礎による一体的な基礎を施工。
建物の周囲土間部分も基礎と一体として施工することでしっかりと地面に施工します。基礎コンクリートは強度試験も行い所定の強度が確保されていることを確認しています。強度もバッチリ出ています。
・建方工事の開始
基礎工事が終わり、いよいよ建て方工事の始まりです。
あらかじめプレカットされているので、現場ではあっと言う間に建ち上がっていきます。
段取り良く次々に柱や梁が組み立てられていきます。
建物外周柱上部の化粧梁などはあらかじめ、“いろは自然塗料”が塗装されています。
・屋根工事
屋根には遮熱シートを敷設しました。
天井裏でも断熱していますが、屋根瓦したの通常ルーフィングと呼ばれるシートは遮熱の機能をもっているものを採用しました。これが予想以上に効果があるようで施工中職人さんにとっても涼しく作業できたようです。
・内部工事
玄関入ってすぐの玄関収納はすべて手作り家具の玄関収納です。
地元瑞穂町にある建具職人さんに製作していただきました。
何度も打合せを行いました。木の温もりが既製品とは比べ物にはなりません。香りも玄関に入ると漂ってきます。
内部はルナファーザー紙クロス(布紙)を貼ってから、専用の塗料で塗装しています。この塗料は重ね塗りができるので汚れたりした場合再度上から塗ることで新築当初の輝きを復活させることができます。
建物完成
外部空間
モダンでシンプルな外観となりました。
壁面収納ポストも軒が深いので雨が降っても濡れることはありません。
デッキも軒に覆われています。柱にもたれて子供が遊んでいる様子を見守ることができます。
内部空間
和室からリビングを通して南側の庭と借景が飛び込んできます。
明るい広々キッチン。対面なので子供がリビングにいても様子を見守ることができます。
玄関脇の玄関収納室
玄関土間で続いている玄関収納室への入口。
可動棚でしっかりと収納できます。
傘や雨具など濡れていても床が土間なので安心です。
施主様の御好意により内覧会を開催させていただきました。
ご近所の方から広告を出していない地域からも駆けつけてくれた方もいらっしゃいました。
建物外部は落ち着いた深い色合いの印象のためか、中に入られた内覧者の多くがインテリアの明るさに驚かれていました。
計画通り、どの部屋も昼間は電気がいらないぐらいに明るく照明などの電気代が節約できそうです。
長く明るい廊下です。コンセプト通りしっかりと明るさの確保と各部屋の機能分離を果たすことができました。
道路側から見た建物間口(幅)に対して奥行があるので、想像以上に広く感じます。
内覧者の方からは、フリースペースの使用用途が気になった方もおられましたが、明るさと空気の流れを確保する上で作って正解だった思います。子供部屋からの空気の流通にも役立つと思います。
住宅は人生と共に長く使用するものです。
今現在のライフスタイルに合わせて作ることも大切なのですが、自分の将来のライフスタイルを考え想像しながら計画を進めることも大切です。
一年近くかけて設計を行い、試行錯誤の末たどり着いた施主様に合わせた設計ができたように思います。
すべてにおいて納得がいく計画というのは、難しいものですがある程度希望に沿ったものが完成できたように思います。
今回の計画は成功したと言うことができそうです。
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